『ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト』
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ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト―最新科学が明らかにする人体進化35億年の旅 著者:ニール シュービン |
私たちヒトの、生物としての歴史を知りたければ、魚に訊くのがいちばんだ。なぜって、わたしたちの体のなかには「内なる魚」がいるのだから……「魚が海から陸に上がっていったという学説にとって重要な、ミッシングリンクの発見である」と世界を沸かせた、ひじがあって腕立て伏せのできる魚、ティクターリクの化石を発見した著者が、古生物学から進化発達生物学(エボデボ)、ゲノムサイエンス、解剖学にいたるまでの成果を縦横に駆使し、生命進化の謎を探究する営みのスリリングかつ意外性に満ちた面白さを明かす、極上のポピュラー・サイエンス。
文章は、適度のユーモアがあり読みやすい。
予備知識なしで気楽に読めるが内容は豊富。
本題と無関係なトピックで読者の気を引くような姑息なテクニックは使わず、テーマに沿った一貫性のある記述で読者を飽きさせない。
ポピュラー・サイエンスはかくあるべしと言う見本のような著作。
著者は、魚類と原始的な陸生動物の中間型であるティクターリクの化石の発見者。
古生物学であるとともに解剖学者でもある。
話題は化石の見つけ方から最新の進化発生学にまで広い範囲にわたるが、中心となるのは、ヒトの体と他の動物の体の共通性である。
この共通性は、外見からは見て取るができない。
遺伝子や発生の観点から見ることによって初めて分かるものなのである。
体の基本的デザインすなわちボディプラン(体制)を決める遺伝子は、ボディプランが大幅に異なる動物でも同じ遺伝子が使いまわされている。
ホックス遺伝子は私たちの体のプロポーションを決め、個々の器官の発生にも関与しているが、ホックス遺伝子の変異型は、体をもつあらゆる動物に現れる。
カエルでもネズミでもヒトでも、体の背側の構造を発生させるような場所でノギンという遺伝子のスイッチが入るが、イソギンチャクからノギン遺伝子の産物を取り出し、カエルの胚に注入すると、何と、背側の構造を余分に持つカエルが出現するのである。
個々の器官についても同様なことが言える。
昆虫からヒト、ハマグリ、ホタテガイまで、モノを見るという作業にオプシンという同じ種類の光受容分子を使っている。
また、眼を作る引き金となるのは、ハエでもマウスでもヒトでも、Pax6という同じ遺伝子である。
サメ類と魚類は感丘と呼ばれる器官でまわりの水の動きを感知するが、ヒトの内耳と感丘は、同じ種類の組織から由来し、同じような構造を共有している。
ヒトの全遺伝子の3%は嗅覚遺伝子である。
そうした1000個以上の遺伝子のうち300個以上が突然変異のためまったく機能を果たせなくなってしまっている。
ヒトが嗅覚より視覚に頼るようにためである。
これらの遺伝子は、嗅覚に頼っていた過去の動物の名残りなのである。
エピローグから引用。
過去数十億年の変化を振り返ってみれば、生命の進化において新奇なもの、あるいは一見類例がないように見えるあらゆる出来事が、実際には、新しい用途のために、再利用され、組み換えられ、用途変更され、あるいは他の形で改変された古い素材でしかないのである。
巻末の「注と参考文献」が充実しているのもうれしいところ。
今日の時点のアメリカのamazonレビューでも、73人中54人が5つ星という高評価。
一人だけ1つ星をつけているレビュアーがいるけれど、単なるヒネクレものでしょう。
Your Inner Fish: A Journey into the 3.5-Billion-Year History of the Human Body
by Neil Shubin
幸い、shorebirdさんの書評もあるので、こちらもご覧ください。
私の書評より参考になるでしょう。
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